教室(学校)を「心が通う」場所にするために
子どもたちが学校生活を楽しいと感じるためには、「教室の雰囲気」と「授業の内容」そのものが心地よく、興味深いものである必要があります。
しかし現実には、学習面や人間関係に課題を抱える子どもも少なくありません。
たとえば、塾に通う子の方が自信を持って授業を受けていたり、家庭で十分な愛情を受けられずにいる子が、学校でいじめに走ってしまったりする例もあります。
このような負の連鎖を断ち切るために、私は「絵手紙教育」の導入を提案します。
絵手紙には、子どもの心をほぐし、感情を素直に表現する力を育てる効果があります。ここでは、特に有効だった2つの実践例をご紹介します。
スタイル1:上級生と下級生の「絵手紙交換」
― 上級生・下級生の絵手紙交流と個性尊重型活動の実践 ―
顔や名前を伏せた状態での交換により、競争や恥ずかしさを避け、「誰かのために描く」ことに集中できる構造とした。
→ 上級生の“してあげたい”気持ち、下級生の“受け取った嬉しさ”が自然と育ち、双方にとって心を通わせる経験となった。
目標 ① 学年を超えた温かな交流を生み出す
②思いやりと責任感、自己表現力を育てる
方法 ① 4年生➡1年生に 5年生は➡2年生に 6年生は➡3年生に、
渡す方法は、低学年の先生がまとめて、先生の判断で1枚づつ渡す。
②書いた生徒の名前や顔はあえて伏せる。匿名性を保つ。先生が把握。
➂低学年(1~3年)は、受け取った絵手紙に返事の絵手紙を書いて先生に渡す。
➃高学年の先生が、生徒に配り、返信の絵手紙を書かせる。
生徒の反応を観察して、このサイクルを続ける回数を決める。
このサイクルは、翌日に返信を書くのではなく、1週間後が望ましい。
教育的効果
① お互いに「競争相手」ではなく、「やさしくしたい相手」になる。
② 上級生は「年下の子を思いやる気持ち」、下級生は「年上に認められる喜び」を経験。
➂ 安心して自分の気持ちを表現できる空間が生まれる。
➃ このスタイルでは、同じ教室の子が見ているわけではないため、作品に対する照れや恥ずかしさが軽減されます。
➄ 何より「誰かのために描く」という行為が、子どもの心に自然な優しさを育てていきます。
上級生・下級生による匿名の絵手紙交換
スタイル2:先生の顔を思いきり「面白く」描こう
目標
① 自由な発想と表現の喜びを引き出す
② 「違いを受け入れる力」を育む
具体的な方法
- 先生の顔を題材に、自由にデフォルメや漫画風に描かせる(彩色はなし)。
- 作品を広げて、みんなで見て、ヘタでいいと実感し認め合う。
- すべての作品が「それぞれに違っていて良い」ことを確認し合う。
- 彩色を加えたい子には、何枚でも描けるように紙を追加配布。
- 他の先生の写真も用意し、グループで話し合いながら描くのもOK。
- 感想発表のあと、モデルとなった先生を教室に呼んで“反応”を観察!
教育的効果
①権威のある先生を“描いて笑う”という行為で、場が和らぎ、自由な雰囲気になる。
②「みんな違う」ということの大切さを、体験的に学ぶ。
➂個性の尊重・多様性の理解が自然に身につく。
大事なポイント
この活動の本質は、笑わせることではありません。
和ませることは良いことです。
子どもたちは、作品を並べて「全員が違っていて、全部がいい」と気づきます。
その「違いを認める感覚」は、他人への理解、共感、そして自分自身を肯定する気持ちへとつながっていきます。この点を、全員が理解し納得するように複数回説明します。
- 全員がのびのびと制作に取り組み、笑顔があふれる場面が多く見られた。
- 表現の比較や優劣を避けることで、全体の雰囲気が安心感に満ちた。
- 教員側にも「見守る姿勢」や「評価しない対話の必要性」が共有された。
今後は、学年間交流や保護者を巻き込んだ発展的活動への応用も検討したい。
スタイル3:親と子の絵手紙交流の勧め
目標 親と子どもの信頼感を強める。
親が子どもの心の中にあるものを見つめて見守る機会をつくる。
学校(先生)との交流の機会ともなり、学校の信頼が高まる
具体的な方法
1.子どもが授業で、親に絵手紙を書く
2.子どもは、その絵手紙と説明プリントを親に渡す
3.親は授業参観日までに、子どもに絵手紙または手紙を書いて渡す
4.授業参観日の授業は、「子どもが親に感謝の絵手紙を書く授業」にする
5.作品を発表する形式か、または展示する形式で、落ち着いてそれぞれの違いを理解させる
教育的効果
1.親と子どもの信頼関係を深める機会にする
2.親も他の子どもとの違いを、価値あるものと認める機会を得られる」」
3.親たちは、学校や先生の、格差を作らないようにする努力を高く評価する機会となる
大事なポイント
子どもたちだけでなく、親も「全員が違っていて、全部がいい」と気づく機会を与えます。
その「違いを認める感覚」は、他の子どもや親を理解する機会、共感、そして親自身を肯定する気持ちへとつながっていきます。
いじめを少なくする活動の一つとして、絵手紙を取り入れ、親子、学校が協力する環境づくりをすることができます。
4.絵手紙は心の距離を縮める、それを活用しましょう
絵手紙は、上手下手ではなく「心を伝える表現手段」です。
今回ご紹介した2つのスタイルは、子どもたちにとって“安心して素直になれる環境”をつくるための仕掛けです。
1.上級生と下級生の交換では、思いやりの心が育つ
2.先生の顔を描く活動では、違いを受け入れる力が育まれます
3.親と子の絵手紙交流では、信頼が深まる
これらの活動が繰り返されることで、子どもたちの間に優しさと信頼が芽生え、クラスの空気が変わっていくはずです。親と子、親と学校の信頼関係を深める。
子どもたちが「違っていていい」と思える教室は、安心と尊重のある居場所になります。
ぜひ、日々の授業に取り入れてみてください。
笑いが起きたときは、「それぞれ違って素晴らしいね」と必ず声かけをする